Harry Potter and the Philosopher's Stone
Chapter 3 [00:08:07] "One minute the glass was there and then it was gone. It was like magic." (Harry Potter)
One ˈminute the ˈglass was ˈthere
「ほんのちょっと前はガラスがあったのに」
カタカナで表すと「ワメネッザガラスワゼア」という感じでしょう。
One は /wən/ です。英語には3つの鼻音があり、/n/ は舌を歯茎につけて口へ向かう息の流れを止める音だと説明をしました。しかし、ここでは /m/ のように唇を閉じてしまいます。「同化」と呼ばれる現象で、次の minute を発音する準備のためにつられてしまうのです。ハリーの頭の中、すなわち心理的な「音素」では /n/ と言っているつもりなのに口は [m] になってしまいます。
minute の /t/ も次の /ð/ の位置、つまり、歯で舌を噛んだ位置で息の流れを止め、破裂させるとともに /ð/ を発音してしまいましょう。
glass の /gl/ の部分は /g/ のために口の奥で息を止めたときに舌先を歯茎につけてしまい、口の奥の閉鎖をといて流れた息で /l/ を発音します。「グラス」ではなく「ガラス」という日本語になっていますが、以外と音声的には正しいのです。
and then it was ˈgone
「でも、無くなっちゃったんだ。」
One ˈminute the ˈglass was ˈthere は強勢が3つもあったのに and then it was ˈgone には強勢が1つしかありません。「アンゼネワズゴウヌ」のように練習をすると真似をしやすいと思います。
「be 動詞 + 過去分詞」は真っ先に受動態を想像してしまいますが、この it was gone は受動態ではありません。動詞が自動詞のときは「be 動詞 + 過去分詞」で「完了形」になります。「ガラスがどっかに行ってしまった」です。
gone の他には done (済ませてしまう)、finished (終えてしまう)、set (準備が整った) など、普段からよく使う表現に現れます。レストランなどで I’m done. と言えば「食べ終えた」という意味で、お皿は片付けてもらえます。I’m done with him. は「もう、別れちゃった。」です。
It was like ˈmagic.
「まるで魔法みたいに。」
この一文も強勢が置かれているのは magic の一箇所だけです。
もしかしたらハリーは It の /t/ に「声門閉鎖音」を使っているかもしれません。喉で息を止めることで舌を歯茎につけることなく/t/ の代わりにしてしまうことがよくあります。これくらい速く喋るときには [ʔ] をうまく使えたほうが楽かもしれません。