Harry Potter and the Philosopher's Stone
Chapter 1 [00:01:13] "I should have known that you would be here, Professor McGonagall." (Professor Albus Dumbledore)
should have 過去分詞: 〜するべきだったthat you would be here
次の部品の説明に入りましょう。
|
that |
you |
would |
be |
here, |
|
/ |
ðət |
jə |
wəd |
bɪ |
ˈhɪə |
/ |
この部分も長くて早口になるので、強勢のある “here” 以外の部分を聞き取ることが難しいかと思います。
破裂音が2つ続く時
この部分では “would be” の部分、特に /db/ を発音するコツを覚えてください。
/d/ も /b/ も破裂音です。破裂音は空気の通り道をどこかで塞いでプレッシャーがかかったところでそれをポンッと放して出す音で、英語では /p/, /b/, /t/, /d/, /k/, /g/ の 6 つあります。/p/ と /b/ は両方の唇、/t/ と /d/ は歯茎、/k/ と, /g/ は口の奥、喉に近い方で空気の通り道を塞きます。
破裂音が2つ続く時、前の方の音は空気の流れを止めるところまでで終わりにして破裂はさせません。
“would” の最後は下を歯茎につけたところで終わり、それと同時に唇を閉じて /b/ だけ破裂させます。
このあとに出てくる “McGonagall” でも同じことが起きます。日本語訳の本では「マクゴナガル先生」と表されていま。/məkˈgoʊnəgəl/ の最初の /mək/ の部分は口の奥の方で空気を止めたところで終え、次の /goʊnəgəl/ を発音します。日本語の小さな「ッ」が入るのにも似ていますが、口の奥で気を止めたことを感じるように「マッ!ゴウナゴウ」と発音をすると近いかもしれません。
移行音
/w/, /r/, /j/ の3つは移行音と呼ばれるグループの子音です。ここではその2つが出てきます。
移行音は口のある部分で摩擦する音が出ない程度に空気の通り道が狭くなる場所を作って出す音です。空気の通り道が狭くなる場所は作るのですが、空気が摩擦する音が出ないようにそれよりは広くです。
「移行音」と呼ばれるのは “you” であれば /j/、”would” であれば /w/ を出すための口の形を作ってから次の音、すなわち /ə/ を出すために口の形に作り変えるときに出る音だからです。「半母音」とも言われます。
/j/ は「ヤ」「ユ」「ヨ」に近い音です。
歯から奥に向かって口の中を舌先でなぞっていくと、歯のすぐ上は出っ張りがあり、そこから斜めにせり上がってやがて平らな天井になり、更に奥へ行くと骨が途切れて柔らかくなります。
柔らかくなる前、固くて平らなところに舌の真ん中あたりを近づけて出す音です。日本語の「ヤ」「ユ」「ヨ」に比べると舌を持ち上げて空気の通り道をもう少し狭くして音を出します。
/w/ は唇をすぼめて空気の通り道を狭くして出す音です。
特に /w/ は「移行音」であることを意識すると良いでしょう。
“wet” であれば口をすぼめた状態から /e/ を発音するために口を開いていくときに出てくる音です。”wood” であれば次にくる母音 /ʊ/ は “wet” の /e/ ほど口を大きくは開きません。ですので、“wet” と比べてもっと唇をすぼめた状態から始めなければなりません。唇をものすごくすぼめたところから次の /ʊ/ を発音するために唇を突き出していく過程で出てくる音です。
/ð/
/ð/ は上の歯と舌の先で空気が摩擦する音を出すものです。
舌を噛むように上の歯の歯先を舌の上面に当てても良いですし、舌の先端を上の歯の裏に当てても良いです。
日本語には歯を使って出す音がないので最初は難しいですが、練習をすればそれほど難しい音ではありません。
日本人の場合は少し後ろ、歯茎を使って出す /z/ と混同してしまうことが多いです。決して /ð/ を発音することができないということではありません。日本語で近い音は「ザ」「ズ」「ゼ」「ゾ」しかありません。人間は横着なので、頭の中では /z/ も /ð/ もひとくくりに普段から慣れ親しんでいる「ザ」「ズ」「ゼ」「ゾ」で処理をしてしまうという意味です。
鼻音のところでもお話をしました。/m/ と /n/ と /ŋ/ の3つの異なる音素を頭の中に持たなければならないように、日本人は
/ð/ という /z/ とは異なる音素を頭の中に作らなければなりません。
音素は心理的なもの、頭の中にあるものですが、口の筋肉や感覚など体で違いを感じることが効果的です。なるべくなら歯を噛むように練習を続けたほうが /z/ と /ð/ との違いをはっきりと意識することができるでしょう。
/ðətjəwədbɪ/
このパートでは “here” に強勢があります。パートごとに使える時間は一定なので、“here” を長くはっきりと発音するためには残りの部分 “that you would be” の部分は前に出てきた “I should have” と同じように早く喋らなければなりません。「ザット
ユー ウッド ビー」と読んでしまうと間に合わなくなります。「ザルユウッビ」くらいの感覚が近いでしょう。
これまでのテクニックを使って練習をしてみましょう。
まず、schwa を使いましょう。
”would” の /w/、”be” の /b/ は唇を使って発音する音なので、このときは唇を動かさないわけには行きません。一方で、それ以外のところでは腹話術のように唇をあまり動かさないようにすると速く、そしてそれらしい音で発音をすることができるでしょう。
“that” の /ð/ は舌を噛んで /t/ は歯茎を舌で叩く音、「ル」に近い音を使うようにしましょう。次の /j/ の位置へ舌を持っていく動きの中で歯茎も叩くことができるように練習をしましょう。
“you” の /j/、”would” の /w/ は気持ちだけ音だ出ていれば結構です。強勢のない部分、すなわち、速く喋らなければならないところははっきりと発音をしないのが正しいのです。
“would be” の /db/ の部分は舌を歯茎につけると同時に唇も閉じてしまい、/b/ だけを破裂させてください。
here
/hɪə/
/ɪ/
英語には日本語の「イ」に似た母音が2つあります。/i/ と /ɪ/ です。
子音の /m/ と /n/ と /ŋ/ や /ð/ と /z/ と同じように、/i/ と /ɪ/ は異なる音として使い分けなければならないにも関わらず日本人の頭の中では両方とも同じ「イ」として処理をしてしまう傾向があります。
/i/ と /ɪ/ の違いは唇の形と舌の位置です。
/i/ は左右の奥歯の側面が見えるくらいにかなり頑張って唇を横に引っ張らなければなりません。そのため舌は高い位置になります。
/ɪ/ は「イ」と「エ」の中間の音、むしろ「エ」に近いくらいの音です。/i/ のように唇を頑張って横に引っ張る必要はありません。舌は低い位置になります。
“peak” (/pik/) は唇を横に引っ張りますが ”pick” (/pɪk/) は「イ」と「エ」の中間の音で、それぞれの音が異なります。
ちなみに日本語の「イ」は /i/ と /ɪ/
の間の音であり、”peck” の /e/ は舌の位置がもっと下がって「エ」よりも口を開いてやや「ア」に近づいた音になります。舌の高いほうから並べると
/i/ – 「イ」– /ɪ/ – 「エ」– /e/ の順ととなります。
“here” の /ɪ/ は「エ」に近い方の音です。
辞書の中には /i/ と /ɪ/ をそれぞれ /i:/ と /i/ と表記したものがあります。それ自体、区別がつくのであればどのように表記しても構いません。
一方で、/i:/ を長母音、/i/ を短母音と表現するのは多少誤解を生みます。
確かに “peak” は “pick” よりも長く発音する傾向はありますが、強勢と強勢の間にどれだけの音節を詰め込まなければならないかで長さは変わってしまいますし、周りに現れる音によっても長さは変わります。
面白いことに英語を母国語にする人が単語だけを読んだ時、“pig” の /ɪ/ は “pick” よりも長く発音され、“peak” の /i/ と同じくらいの長さになります。/g/ は /k/ よりもエネルギーが必要ない弱い音なので、その分、前の母音にエネルギーを使うことができるからです。
音の長さではなく、音の質の違いを使い分けるようにしてください。
再び /h/
/h/ は口の奥で空気が摩擦する音を出します。日本語の「ハ」「ヘ」「ホ」とほとんど同じ音ですが、日本語と比べて、強いて言うならば、
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- 日本語の「ハ」「ヘ」「ホ」よりはもう少し奥、喉に近いの方で、そして、喉をもう少し開くようにします。
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- 日本語の「ハ」「ヘ」「ホ」と比べてもっと強く、空気が擦れる音を出すようにします。
日本語では「イ」段のほとんどで子音が変わってしまいます。「イ」は舌を高い位置に置いて出す母音です。これにつられて前の子音を発音するときも舌は高い位置に置かれ、ついでに舌は平らになり左右のヘリは奥歯にくっついてしまいます。この結果、「匕」は上顎の固くて平らなところと舌の真ん中で空気が摩擦する音になってしまいます。
/h/ は口の奥で空気を摩擦させる音なので、日本語の癖を出さないように練習をしなければなりません。ここの “here” は強勢を置いてはっきりと発音する場所なので、”should have” の /h/ のように省略はしません。
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- 「ヒア」ではなく、まず、口の奥で空気が摩擦する音、すなわち /h/ を十分に出したあとで /ɪə/ (「イア」) を発音するようにしましょう。/h/ と /ɪə/ は同じくらいの長さの時間をかけてよいでしょう。それくらい /h/ を独立した音として発音してください。
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- /ɪə/ の /ɪ/ は「エ」に近い音を出すようにしてください。「イ」は「エ」よりも日本語の癖が出やすくなります。より簡単に癖を隠す方法があるのですから、あえて難しいことをする必要はありません。
ここまでで説明してきたことに注意をして “that you would be here” を練習してください。「ザルユウッビ ヘア」くらいの感覚で練習すると良いでしょう。